スタッフブログ
2019/09/25

シニア シニア 時々ジュニア

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸
みなさんこんにちは。
今週のブログ担当は高橋です。とても長いですよ。どうぞ最後までお付き合いください。



先日フェイスブックにてご紹介しておりました通り、1週間の研修でベッカー醸造所を訪問致しました。ワイナリーのスタッフ達とともに、さんさんと降り注ぐ太陽の下、畑での作業を微力ながらお手伝いさせて頂いたのは、とても貴重な経験となりました。



ご覧になったかたは、
「あれ、ベッカージュニア(息子)ばっかり?」、
「あの渋いベッカーシニア(父)の写真がほとんど無いな・・・」とお気づきになったかもしれません。

そうなんです。ベッカーシニアのファンの皆さん、大変お待たせ致しました。
今日はどどーんとベッカーシニア [※以下、お父 (おとう) ] 特集です。
写真はお気に入りの古木のジルヴァーナーのワインを手に、にっこり微笑むお父(おとう)。
今回の滞在中に撮れた写真の中で、これは奇跡の一枚と言えます。


皆さんがよくご存じの、葉巻をぷか~っとふかした渋い横顔のモノクロ写真のイメージ通り、お父は日頃から言葉数が少なくとても静かな人で、黙っていてもただならぬ存在感を放っています。
 
実は私にとってこれが4度目の訪問となるのですが、それでも日本人ツアーの大勢の中の一人でしかなく、もちろんお父は私のことなど全く覚えていません。
ですから今回の私の滞在のサブテーマは、"お父と仲良くなる” でした。
 
この微笑みを拝むまでには、まるで野生動物にじわじわと距離を詰めていく感覚にすら似ている緊張感を持ちつつ、気長で地味で馬鹿みたいなアプローチを毎日コツコツと積み重ねたのでした。  
 



1、私は全くドイツ語が話せませんが、なんちゃってドイツ語で毎日お父にご挨拶。
  こちらは弊社社長直伝の使えるドイツ語メモ。

ドイツ語mini.jpg



2、ベッカーTシャツ着用で畑作業に参加。

Tシャツ小.jpg



3、お父が溺愛しているワンコたちと仲良くなる。

  レイジー小.jpg




4、フリッツ君とお揃いの、キツネの手作りフェイクタトゥーで忠誠心アピール。

フリッツタトゥー.jpg



5、とにかく真面目に働く。
  こちらは、私たちがラベル貼りと箱詰めをしたワインを出庫するお父。

パレット小.jpg
 



そんな日々を過ごした頃、「日曜日に日本に帰るんだったよね?」とフリッツ君。
いやいや、予定通り土曜日の朝に帰ると話すと、明らかにやってしまったという表情をしている。
何と、私たちの帰国日を一日間違えて、ベルリン出張を入れてしまっていた。
土曜日の昼に戻ってくるので、彼に会えるのは何と今日が最後。
おいおい何だとコラーーー(-_-#)


ベルリンでは大きな音楽フェスでのワイン販売と、重要なレストランさんへのグランクリュ・プレゼンテーションを予定していると言う。
もちろん大切なお仕事だから行ってもらって構わないのだけど、明日から誰に案内してもらおうか・・・
英語の話せるスタッフは何人かいるが、明日はお休みだったり働き出してまだ1週間の新人さんだったり。
とにかく誰かの予定を調節してくれるらしい。


 「英語が話せないオヤジと、ドイツ語が話せない君たち。
  その組み合わせを考えると・・・笑えるな。
  ま、楽しんで!(笑)」


あんた、他人事だと思って爆笑してるけど(; ・`д・´)ほんとにもう!
まぁまぁなピンチでしょ!

いや、待てよ。案内役のフリッツ君が居なくて大ピンチではあるけど、これはひょっとしてお父に近づくチャンス。
そう、またと無い大チャンスだ!!
 
 


翌日、フリッツ君は早朝にベルリンへ旅立ち、私たちの畑の案内はまたまたフランス人のクロード先生。相変わらず容赦なくフランス語とドイツ語で話しかけてきて、最後はチューしてくれーとせがんでくるが、ワイナリーの女性スタッフ全員に軽くあしらわれているのがかわいい。今日も絶好調だ。


夕食はオフィスのスタッフが配慮してくれ、お父と一緒にレストランへ行こうと誘ってくれた。
英語とドイツ語を訳してくれるスタッフを介しての会話に、最初は面倒くさそうに仏頂面していたお父も、よく食べよく飲みよく笑う私たちに慣れてきたようで、だんだんその表情もほぐれてきた。

お父はまだ日本に来たことが無い。日本にはお父ファンがいっぱいいて、みんなが初来日を熱望していると伝えると、「おぉ、いつか行きたいんだけどな」とはっきりしない返事。これは関西人にとっての“行けたら行くわ”は“行かない”の意味であるのと一緒だ。すかさず「じゃあ来年は?」と逃がさない私。スタッフがにやにやしながら訳してくれていたけど、はっきり来るとは約束してくれなかった。


 
ところで、お仕事中になかなかお父と会えない。お昼ご飯の時は必ず醸造所に戻ってくるが、お父だけみんなとは別の畑で作業しているようだ。私たちはゆっくりと9時から働いているから、もうその頃にはお父の姿は無い。
「シニアのお仕事している姿が見たい。シニアと一緒に畑で働きたい!」と伝えた。
まるで志願兵である。
「朝早くても良いなら、7時半に醸造所においで。」とちょっと照れ臭そうに言ってくれた。
思わず日本語で「ぃやったーーーー!!」と湧いた。


 
にわかな興奮で何だかぐっすり眠れないまま寝不足だったが、約束通り7時半に出勤した。
お父にまたなんちゃってドイツ語で挨拶。
いざ畑へ向かう車へ乗り込めーとなったが、あれ?お父が来ない。のんびりお花にお水をあげている。かわいい。いや、かわいいとか言ってる場合とちゃう。

お花小.jpg


お父~( ;∀;) お父と一緒に働きたいことうまく伝わってない(泣)
結局今日もクロード先生と畑仕事か~。
お父への想いはどんどん募る一方でした。



 
滞在最後の夜はお父がご自宅のバーベキューに招いて下さった。
まずは大きなヴュルストとお父の好きなジルヴァーナーで乾杯。
軽快な飲み口は、明るい時間から飲むのに本当に最適だ。

ジルヴァーナー小.jpg


次に日本では限定販売でしか入荷しないジルヴァーナー・アルテレーベンが出てきた。私も大好きなワインだ。

「ジルヴァーナーとジルヴァーナー・アルテレーベンと美味しいヴュルストなんて最高!古木の畑はザンクトパウル城のそばなんでしょ?」と言うと、お父の表情がピクッと反応した。
「そうだ、お前この良さがわかるのか」と言わんばかりに急に豊かな表情になり、ボトルを持って饒舌に語りだした。よっぽどお父はジルヴァーナーが好きなんだろうな。
すっかりご機嫌になって、下味をつけていたお肉をどうだと自慢げに見せてくれた。


私は思わずフリッツ君に
『山が動いた』とメッセージを送りました。


ワッツ小.jpg



静かに星が輝きだした頃、お父はワイングラスを高く掲げて空を仰ぎながら何度も繰り返し言っていました。「この広がる自然、美味しいワイン、良い時間、最高じゃないか。」
 


 
あっという間に旅立ちの朝、何から何までお世話になったスタッフに、お礼とお別れをした時点でもはや子供の様に号泣。
駅までは通訳スタッフ無しでお父が見送ってくれると言う。もうそれだけで泣けてくる。
朝日を浴びてキラキラと輝くぶどう畑の間を走り抜ける道のりで、その美しさとうまい具合にラジオから流れるセンチメンタルなBGMが相まってより涙を誘った。


 
とうとう駅に到着し、お父との別れの時。
ボロ泣きの私たちに戸惑いつつも、優しくハグをし穏やかな笑顔で見送ってくれた。
「社長によろしく伝えてくれ。いつか日本に行く。」と言っていた(ような気がする)
 
去っていくお父の車にずっと手を振り続けていると、ルームミラーに映った私たちに気付き、後ろを向いたまますっとクールに手を振ってくれた。


あぁ、お父~~(T_T)/~~かっこよすぎる。
すっかりお父の魅力に心を撃ち抜かれて、電車に乗り込んだあと撮った写真を見返して、完全にお父ロス状態。


あぁ、お父~~お父~~寂しい~としょんぼりしていると、
フリッツ君から「ハロー!最終日の畑仕事はどうだった?」と明後日の方向を向いたメッセージが来た。


もう帰りの電車に乗ったよ!!



皆さん、フリッツ君の次の来日時には、
予定パンパンにして全国連れ回して
いっぱいいっぱいプレゼンテーションしてもらいましょうね。



ヘレンベルガー・ホーフ㈱ 高橋