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2023/08/30

新梢をカットする理由

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸

ドイツのルドルフ・フュルスト醸造所よりこんにちは!

 

大田黒です。

 

こちらではいよいよ1年で最もハードな収穫の1ヶ月がはじまりました。

 

今回は、収穫の前に行う畑作業の一つ「新梢のカット」についてのお話です。

 

新梢のカットって言っても言葉だけじゃわからないですよね。

私も日本で山野から伸びすぎた新梢のカットと言われまず?でした。

 

今回もかなりマニアックですが、わかりやすくがテーマですので努めます。

 

カットするとは、新梢この部分のことです。(以下画像参照)

 

 

 

 

大きな剪定鋏でカットしていくのですが、仕立ての高いところで急斜面という条件になると肩と腕がとてもしんどい作業です。

 

 

 

なぜカットするのか利点と欠点に分けてご説明します。

 

◆利点

 

1.風通しをよくすることによって、湿気を逃して病気を防ぐことができる。

 

2.ぶどうの実の成長をより促すことができる。

 

◆欠点

早期に切るとぶどうの実が大きくなりやすく、凝縮感のある小粒のぶどうが育ち辛くなる。

 

 

利点1の方は想像していただきやすいかと思います。

 

特に畝の間が狭く低い仕立ての畑だと、新梢が畝の間の上部をアーチのように覆い、湿気をこもらせてしまい、うどん粉病やべど病などの発生の原因となってしまいます。

 

特に6月より前の時期は大抵、まだぶどうの実の細胞分裂(ぶどうの実の成長、糖蓄積の前の段階)が終わっておらず、べど病が実に感染してしまい房がダメになってしまう危険性が高く特に注意が必要です。

 

病害のリスクだけを考えると、早めに切ってしまうことがベストです。

 

しかし、上記の欠点のように早く切ってしまうと、ぶどうの成長が促され実が大きくなってしまいます。

 

ぶどうの樹の成長は、1つのエネルギーの分配でイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

 

ぶどうの樹は、新梢を伸ばすことにも、実を成長させることにももちろんエネルギーを使います。

 

ですので新梢を早く切ってしまうと新梢に使わないエネルギーが余る分、実に送られ実が大きくなります。

 

高品質なワイン造りを意識する生産者さんには、この病害のリスクと目指すぶどうの品質との葛藤があるのです。

 

そう、まさにチキンレースです!

とある生産者さんに「まさか、新梢今年一度も切ってないじゃない?大丈夫?」と聞くと収穫前の現在「問題なかったよ。今年まだ一度も切ってない。収穫の前には切るよ。収穫の邪魔だしね。」と若干どや顔。

さすがはチキンレースの勝者(笑)

 

もちろん、その土地が乾燥している土地なのか湿度の高い土地なのか、どういう気候なのかに左右されるので判断が問われます。

 

こういった判断をする際も、フュルスト醸造所では、セバスチャン・フュルストさんはもちろん畑の責任者セバスチャン・シューアさん、セバスチャン・フュルストさんの右腕ことフローリアンさんがそれぞれの意見でディスカッションしているので、聞いていて面白いです。

 

もちろんセバスチャン・フュルストさんは、超ギリギリまで切らない派。

 

ここまで読んで下さった方への醸造所訪問の一番おすすめの時期をお伝えします。

 

8月の収穫前ギリギリに生産者さんを訪ねて畑を見るのが一番おすすめです。

その生産者さんが、どんな仕事をされているかその年がどんな年かをある程度予測することができます。

その生産者さんを知っていれば、その年の過去と現在、未来(どんなワインになるのか)を全て想像できるタイミングです。

 

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