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ドイツワインの最近の傾向
ドイツはワイン生産地の中でも最北に位置するため、ぶどうを栽培している産地の中では冷涼な気候です。
ぶどうは過熟せず、できるワインはアルコール度数も低めで果実味も温暖な産地より控えめのものが多く、赤ワインも渋みも強くありません。その分、それぞれの畑で育つぶどうの違いがしっかりと味わいに反映されるため、ドイツの有名生産者は一様に「エレガントで、土地の味わいを表現したワインを造りたい」と言い、ワイン造りを行っています。
ワイナリーではワインをテイスティングさせてもらう際、
必ずといっていいほど、畑の土壌の話をしてくれます。
モーゼルやラインガウに代表される急斜面の畑。こちらは北国で太陽が低いため、太陽に対してできる限り垂直にし、日照量を稼ぐことができるというメリットがあります。また、水はけもよく、斜面のぶどうは適度に水分ストレスを受けて、凝縮する傾向にあります。
また、上図のように、斜面であればあるほど表土は薄くなって、岩石含有量が高くなります。石がちな土壌ではぶどうの収量は少なくなるものの、その分凝縮した実になり、できるワインもしっかりとその土地の味わいを反映したものとなるので、モーゼルやラインガウに限らず上級ワインは斜面の畑に植えるケースが多く見られます。
モーゼル地域の断崖絶壁の急斜面の畑からは、ミネラル感あふれる味わいのワインが生まれます
ドイツでも最近、化学肥料を使用しない生産者が非常に増えてきています。化学肥料や除草剤を使用しないことは大変な作業量になりますが、土地が活性化し、よりぶどうが自然の力だけで力強く成長することによって、土地の味わいを表現できるようになるというメリットがあるため、優良生産者は当たり前のように有機栽培を行っています。また、「ナチュラルワイン」と呼ばれるような、酸化防止剤が非常に少ないワイン、無添加のワインも少しずつ見られるようになってきましたが、あまりにナチュラルな造りになると、逆に土地の味わいを表現しづらいものとなるため、他国にワインに比べると、濁った無添加のワインはまだまだ少ない印象です。
また、酸が強い品種のワインは、酸とバランスをとるために少しだけ残糖分を残すこともあって、酸化防止剤を最低限入れないと二次発酵の可能性もあるため、品質保持のために最低限の酸化防止剤は入れるという生産者も多い傾向です。
また、20年ほど前は、ある程度毎年のようにできていたアイスワインも、近年はぶどうがなかなか凍らないようになり、非常に希少なものとなりました。その代わり、温暖な気候になってぶどうの熟度が上がるようになったので、貴腐ワインの生産は以前より容易になったようです。
ドイツでも地球温暖化の影響はしっかりと出てきています。近年では2018年や2022年のような、極端に暑い年もしばしば見受けられるようになりました。年々収穫も早くなっています。今のところは、ぶどうもしっかり熟し、涼しかった昔に比べると作柄も安定してきたので、品質向上、収量の点では、プラスの要素がとても大きいようです。ただ、何週間も雨が降らないかと思えば、一気にまとまった雨が降ったりと、極端な気候になってしまったこともあり、各生産者はその対策に追われています。