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スタッフブログ
2023/05/25
近年ドイツの温暖化事情
みなさま、こんにちは。今週のブログはいそもとがお届けいたします。
わたしが運営させて頂いているインスタでも投稿させて頂いていますが、大変ありがたいことにこの4、5月と2ヶ月連続でドイツに行かせて頂いておりました。各ワイナリーのお話などはインスタに細かく投稿していますので是非そちらもご覧になってください。
実に3年以上ぶりの渡航で、やはりドイツでも大きく状況は動いていました。どの生産者さんも仰っていたのは
『近年の温暖化』
について。ここでは伺ったお話を写真を交えてご紹介したいと思います。
一番印象的だったのはユリアン・フーバーさんの言葉でした。
『2018、19、20、そして22年も非常に暑い年だった。21年は近年では逆に珍しくクラシックな、ピノ・ノワールにとって良いヴィンテージ。今後、18、19、20、22のような温暖な年が“普通の年”になっていくかもしれない。21年のような冷涼ヴィンテージは希少になってくるよ』
この数年で、『暖かい』の基準が『普通』になりかわりつつあるようです。以下、各生産者さんの言葉です。
■モーゼルはピースポートのレナート・ファイトさん。
ピースポートはもちろんモーゼルの中でもリースリングの銘醸中の銘醸。
冷涼な気候ならではの繊細な味わいのリースリングが特徴的な産地ではあるのですが、驚いたのは近年レナートさんが取り組んでいる新たな品種『メルロー』の存在でした。ファルツやバーデンなどでカベルネやメルローなどのボルドー系品種の栽培が増えていることは聞いていましたが、まさかモーゼルにまで。その時は18年のメルローを飲ませて頂いたのですが、味わいの密度、そして完成度の高さは冷涼産地のものを飲んでいるとは思えないほどでした。
『シラーも試してみたいと思ってるんだ』
彼の所有する優良畑になんとシラーを植える計画があるのだとか!モーゼルにシラー、、いや、彼のメルローの品質を見ればその可能性も十分にあるかもと思わせてくれます。
そして、多くの生産者がこの温暖な気候に向けての対策として『灌漑設備』の導入を進めていました。
■ラインガウのブロイヤーさん。
一部の畑に灌漑設備を設置されているブロイヤーさん。(ぶどう樹下部に見えるホースのようなものが灌漑設備)
『畑(斜面か否か)の環境とぶどうの樹齢によって、灌漑を行うべきか判断しています。まだ奥深くまで根を張り切れていない若木は、水不足の影響を直接受けやすいので灌漑が必要な時が多くなります。ある程度の古木になってくるとしっかり深くまで根を張るので、そうなると地中深くの水分を得ることができます。古木であるほど乾燥に強いので灌漑が必要ないんです』
『ラインガウといえばリースリング。ワイン好きな方たちはやはりラインガウにリースリングを求めてくれている。温暖化によって栽培品種を変えることは簡単です。しかし私たちはこの伝統を守っていきたいのです』
■ミッテルラインのラッツェンベルガーさん。
『乾燥した年が続いたおかげでライン川の水位が下がりすぎて物流に大きな支障をきたしてしまったこともあったよ。川底が露呈した場所も出てきたから、そこに古銭を発掘しにも行ったんだ(笑)』
『毎年というわけではないけど、灌漑が必要な年が目立ってきた。使用する水は森からの湧き水を使っているから畑にとってもぶどうにとっても自然と馴染んでくれる。繊細なリースリングを守るためには必要なことだけど、こういった処置が必要な年が増えないことを祈ってはいるよ』
ドイツのワイン産地の中でも最も冷涼なエリアに数えられるミッテルラインにも、その影響は色濃く表れているようです。
■ラインヘッセンのケラーさん。
『わたしはブルゴーニュの大ファンだが、近年ブルゴーニュの美点であるエレガンスが失われつつある。アルコール度数も15%にまで上がることもざらだよ。逆にこの2、30年でドイツのピノ・ノワールは急激な成長を遂げている。かつてはせいぜい10%程度までしか上がらなかったアルコール度数も、今では13%までしっかり上がるようになってきた。世界的に見て、今後ドイツのピノは大きなトピックになることは間違いないよ』
■モーゼルのバストゥゲンさん(ぶどうの樹3本のオーナーの畑を管理してくださっているご一家)
『2022年に300本ほどの新しい樹を植えたんだけど、極度の雨不足で定着する樹が少なかった。死んでしまったんだ。今年も200本以上新たに植えなおさないといけないのだけど、今年は今のところ雨もしっかり降ってくれているから胸をなでおろしているところなんだ』
ピノ系品種(ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ピノ・グリなど)にとってはむしろこの状況は追い風であると捉える生産者がいる一方で、冷涼な気候を好むリースリングなどの品種にとってはその伝統を守るための工夫に奔走されているという対比がとても印象的でありました。
わたしたちが最後にドイツを訪れたのは2018年のことでした。
当時は
『今年は非常に暖かくて良い年になりそう!期待できるね!』
なんて話をしていたのですが、コロナ禍で渡航できていない間に、これまでの常識を変えざるを得ないところまでその状況が変わっていました。コロナによる経済的なダメージだけでなく、気候変動による対策にも大変苦労されていたようです。
2023年、今年はどうなるのでしょうか?わたしたちも見守っていきたいと思います。
今週末のインスタライブは現地滞在中の宮本と繋ぎます。
https://www.herrenberger-hof.co.jp/blog/2023/05/24/857
こんな状況に思いを馳せて、是非ご覧になって頂ければと思います。
礒本
わたしが運営させて頂いているインスタでも投稿させて頂いていますが、大変ありがたいことにこの4、5月と2ヶ月連続でドイツに行かせて頂いておりました。各ワイナリーのお話などはインスタに細かく投稿していますので是非そちらもご覧になってください。
実に3年以上ぶりの渡航で、やはりドイツでも大きく状況は動いていました。どの生産者さんも仰っていたのは
『近年の温暖化』
について。ここでは伺ったお話を写真を交えてご紹介したいと思います。
一番印象的だったのはユリアン・フーバーさんの言葉でした。
『2018、19、20、そして22年も非常に暑い年だった。21年は近年では逆に珍しくクラシックな、ピノ・ノワールにとって良いヴィンテージ。今後、18、19、20、22のような温暖な年が“普通の年”になっていくかもしれない。21年のような冷涼ヴィンテージは希少になってくるよ』
この数年で、『暖かい』の基準が『普通』になりかわりつつあるようです。以下、各生産者さんの言葉です。
■モーゼルはピースポートのレナート・ファイトさん。
ピースポートはもちろんモーゼルの中でもリースリングの銘醸中の銘醸。
冷涼な気候ならではの繊細な味わいのリースリングが特徴的な産地ではあるのですが、驚いたのは近年レナートさんが取り組んでいる新たな品種『メルロー』の存在でした。ファルツやバーデンなどでカベルネやメルローなどのボルドー系品種の栽培が増えていることは聞いていましたが、まさかモーゼルにまで。その時は18年のメルローを飲ませて頂いたのですが、味わいの密度、そして完成度の高さは冷涼産地のものを飲んでいるとは思えないほどでした。
『シラーも試してみたいと思ってるんだ』
彼の所有する優良畑になんとシラーを植える計画があるのだとか!モーゼルにシラー、、いや、彼のメルローの品質を見ればその可能性も十分にあるかもと思わせてくれます。
そして、多くの生産者がこの温暖な気候に向けての対策として『灌漑設備』の導入を進めていました。
■ラインガウのブロイヤーさん。
一部の畑に灌漑設備を設置されているブロイヤーさん。(ぶどう樹下部に見えるホースのようなものが灌漑設備)
『畑(斜面か否か)の環境とぶどうの樹齢によって、灌漑を行うべきか判断しています。まだ奥深くまで根を張り切れていない若木は、水不足の影響を直接受けやすいので灌漑が必要な時が多くなります。ある程度の古木になってくるとしっかり深くまで根を張るので、そうなると地中深くの水分を得ることができます。古木であるほど乾燥に強いので灌漑が必要ないんです』
『ラインガウといえばリースリング。ワイン好きな方たちはやはりラインガウにリースリングを求めてくれている。温暖化によって栽培品種を変えることは簡単です。しかし私たちはこの伝統を守っていきたいのです』
■ミッテルラインのラッツェンベルガーさん。
『乾燥した年が続いたおかげでライン川の水位が下がりすぎて物流に大きな支障をきたしてしまったこともあったよ。川底が露呈した場所も出てきたから、そこに古銭を発掘しにも行ったんだ(笑)』
『毎年というわけではないけど、灌漑が必要な年が目立ってきた。使用する水は森からの湧き水を使っているから畑にとってもぶどうにとっても自然と馴染んでくれる。繊細なリースリングを守るためには必要なことだけど、こういった処置が必要な年が増えないことを祈ってはいるよ』
ドイツのワイン産地の中でも最も冷涼なエリアに数えられるミッテルラインにも、その影響は色濃く表れているようです。
■ラインヘッセンのケラーさん。
『わたしはブルゴーニュの大ファンだが、近年ブルゴーニュの美点であるエレガンスが失われつつある。アルコール度数も15%にまで上がることもざらだよ。逆にこの2、30年でドイツのピノ・ノワールは急激な成長を遂げている。かつてはせいぜい10%程度までしか上がらなかったアルコール度数も、今では13%までしっかり上がるようになってきた。世界的に見て、今後ドイツのピノは大きなトピックになることは間違いないよ』
■モーゼルのバストゥゲンさん(ぶどうの樹3本のオーナーの畑を管理してくださっているご一家)
『2022年に300本ほどの新しい樹を植えたんだけど、極度の雨不足で定着する樹が少なかった。死んでしまったんだ。今年も200本以上新たに植えなおさないといけないのだけど、今年は今のところ雨もしっかり降ってくれているから胸をなでおろしているところなんだ』
ピノ系品種(ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ピノ・グリなど)にとってはむしろこの状況は追い風であると捉える生産者がいる一方で、冷涼な気候を好むリースリングなどの品種にとってはその伝統を守るための工夫に奔走されているという対比がとても印象的でありました。
わたしたちが最後にドイツを訪れたのは2018年のことでした。
当時は
『今年は非常に暖かくて良い年になりそう!期待できるね!』
なんて話をしていたのですが、コロナ禍で渡航できていない間に、これまでの常識を変えざるを得ないところまでその状況が変わっていました。コロナによる経済的なダメージだけでなく、気候変動による対策にも大変苦労されていたようです。
2023年、今年はどうなるのでしょうか?わたしたちも見守っていきたいと思います。
今週末のインスタライブは現地滞在中の宮本と繋ぎます。
https://www.herrenberger-hof.co.jp/blog/2023/05/24/857
こんな状況に思いを馳せて、是非ご覧になって頂ければと思います。
礒本