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ドイツワイントピックス
2024/02/14

早期の発芽の危険性について 【大田黒のドイツワイントピックス】

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸

「ドイツは寒いでしょ?」とよく言われますが、ここ2週間ほど暖かい気候が続いています。

 

現在、私のいるフュルスト醸造所ではほぼ毎日ぶどうの樹の剪定をしています。

 

ぶどうの樹は休眠期に入っていて活動は停止中。

 

そんな中気になるのが冒頭にもお話した暖かい気候。

2月の初旬にも関わらず日によっては最高気温15度にもなる日があります。

こうなってくると発芽が早まるのが心配されます。少しの期間暖かくなったからと言ってすぐに発芽するわけではありませんが、温暖な気候がこのまま続き、だんだんと樹が目を覚まし、活動し始めると発芽が始まります。

 

以前、当主のセバスチャン・フュルストさんが温暖化の影響をどう思うかという質問に「この地(フランケン地方西部)は元々冷涼な気候なので、約30年前はぶどうが熟さないことが心配されるほどだったのに対して今は非常に温暖化はポジティブに働いている。ただ、急な気候変動や災害、霜の危険があるのは心配。」と答えていました。

 

温暖化と霜ってなんだか逆のように思いませんか?

この話を日本語に訳しながら、自分でなんで温暖化で霜が心配なんだろう?と疑問に思っていました。

 

ですが、最近の暖かい天気で早期の発芽が心配な理由として早く芽が出てしまうとその後に冷え込んで霜が降りるリスクが高くなるかだということに気がつきました。


発芽の始まったシャルドネの樹(2023年撮影)

発芽が始まった状態で霜が降りると芽が凍って腐ってしまってその芽がダメになってしまうのです。

これがいわゆる遅霜と言われるものです。

 

しかし、一度やられたらその芽はダメになり、枝が生えなくなって収量減だと思っていませんか?

 

実は、一概にそうとも言えないんです。

 

実は、ぶどうの樹の芽にはメインの芽(ドイツ語:Hauptauge)と予備の芽(Nebenauge)があります。

 

このメインの芽が霜や傷によってやられてしまった際に、予備の芽が動き、生命として生き残ろうと活動します。

(ぶどうの樹は、芽が全て潰れてしまうと枯れてしまいます)

 

この予備の芽の収量は、メインの芽に比べてつけるぶどうの量が少なめになります。

なので収量が減るというのは間違いではありませんが、一度霜にやられたからと言ってゼロになるとは言い切れません。

(もちろん予備の芽もなんらかの原因でやられてしまっている場合は別です)


その他にも、面白いのが例えば芽が生えたあと人差し指ちょっとくらいの長さまで成長したタイミングで雹害にあったとします。


新梢を伸ばし始めた樹(2023年撮影)

その場合もなんといわゆるプランBをぶどうの樹は持っています。

 

雹に遭うと伸びた芽が拳銃で吹き飛ばされたかのように折れてしまいます。

 

そうなった場合、折れてしまった部分より下の新梢の途中から、芽を生やして生き残ろうとします。

 

この途中から生えた芽は、Geiztrieb(ドイツ語直訳:欲な芽?日本語では、胴吹きというそうです)と呼ばれる通常は、手で取り除かれるものです。

 

上記のようにぶどうの樹は常にプランB(代替プラン)を持っている気がします。

今回は、早期の発芽を心配する最中に面白いと思ったので書いてみました。

 

 

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