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ドイツワイントピックス
2023/11/22

ドイツワイントピックス:紅葉した畑を観察する重要性

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸

今回もドイツから大田黒がお届けします。


最近、このドイツワイントピックスがよりコアな内容になっていて一体誰が読むんだと不安に駆られながら書いています。
「読んだよ」と教えていただけると私はとても嬉しいので是非ご連絡等お待ちしております(笑)

ドイツでは、収穫が終わり、醸造所も落ち着きを取り戻した10月下旬から11月。
今までが嘘かのように作業量は減りましたが、それでもやることは次々と出てきます。現在の作業は主に若木のケアや、畑のメンテナンスです。

10月末頃から畑のぶどうの葉は、森の木々とともにみるみる黄色くなり秋を感じさせます。
この時期の畑はぶどうも青々とした葉や新梢が生い茂るわけでもなく、ただ葉が黄色くなり落葉していきます。
黄色い畑を見るのは綺麗かもしれませんが、やはりぶどうがなっている状態と比べるとどこか寂しげな光景です

実はワインの生産者さんにとってこのタイミングこそ、翌年の仕事予定を立てるための大切な観察の時期なのです。
10月下旬のある日、自宅から対面に位置する畑を見渡すと、すでに葉が黄色くなった畑とまだ青々とした畑に別れていることに気がつきました。

より近くで見ると畑の中でも畝や、樹によって黄色くなっているもの、なっていないもの、さらにはすでに落葉しているものがあり  「これは、畑の向きが違い、僅かな日射量によっての差なのかな」と考えていました。


向かい側の谷から見たビュルクシュタット村の畑。画面中央がフュルスト醸造所。

実は、この違いは各所の土壌の強さが影響しています。
簡潔に表記すると

・葉が緑の期間が長い→土壌の栄養が豊富→ぶどうの樹が力強く育っている
・葉が早く黄色くなる→土壌が痩せている→ぶどうの樹の栄養が足りていない可能性
・早い時期に落葉→土壌の栄養不足


上記のように判断できます。
つまり、長く枝に葉が残っている箇所ほど土壌の養分が多く、ぶどうの樹が力強く成長できる土壌ということができます。
このような判断結果から、春先に撒く肥料の量や、場所を検討することができます。
さらに、この時期の状態から冬の剪定でその樹にどのくらいの長さの枝を残してそこからいくつの芽を出してどのくらいの量のぶどうを樹にならせるかも考えます

・葉が緑の期間が長い→肥料を少なく撒く、もしくは必要なし、剪定の際に枝を長めに残す。
・葉が早く黄色くなるor早い時期に落葉→肥料でケアをする、剪定の際枝を短めにカットして芽の数、収量を減らしてエネルギーの分散を防ぐ。


私のいるフュルスト醸造所では、この紅葉から落葉の時期が一つの畑において同時に起こることが理想的です。
これは、収穫時のぶどうの熟度も自然とおおよそ均一になりやすいことにつながります。
毎年、このような観察をして年々積み重ねてより良い畑にしてより良いワインが造れるよう努めています。

1980年代前半まで段々畑だった現在のツェントグラーフェンベルクGGの斜面。黄色くなった葉と緑の葉の箇所がストライプ状に見える。

生産者さんによっては、剪定を収穫後すぐに行い、12月から3月まで休みを取るところもあるようですが、フュルスト醸造所では葉や、枝にある栄養分が根にゆっくりと戻る落葉後約4週間まで待ってから2ヶ月以上にわたる長い期間をかけて剪定作業を行います。
一年の間に少しでもボーっと過ごす時期はないのかと聞きたくなります。

品質を突き詰めるというのは、こういうことなんだなと日々感心しています。笑
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