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ドイツワイントピックス
2021/04/14

フィールドブレンドワインについて

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸
今月も大田黒のドイツワイントピックスの週がやってまいりました。

只今ドイツでは、急激に冷え込み、遅霜がぶどう畑に多大な影響を与えているようです。
遅霜と言えば2017年も遅霜に見舞われました。

しかし、早くから自然的に収量制限ができたことから
現地でも有名なゴー・エ・ミヨ誌でも評価の高い年です。

生産者さんは今対応に必死です。
どうにか功を奏するよう願うばかりです。

さて、世の中では新年度がスタートしましたが、
今年度もどうぞ温かい目でご覧ください。


いきなりですが・・・

「皆様オーストリアワインにはどんなイメージをお持ちですか?」


言語とワイン法が似通っていることから、
よくドイツと似たような認識をお持ちの方が多いかと思います。

実態は、気候、品種、味わい、マーケティング等全くと言って良いほど異なります。

先日、オレンジワインの権威サイモン・ウールフ氏の
オーストリアのオレンジワインとフィールドブレンドワインについての記事を見つけましたので、

今回は、その中から、

「オーストリアのフィールドブレンド」

についてお話します。
(オレンジワインのお話はまたそのうち)

どうぞお付き合いください。


そもそもフィールドブレンドとは?
フィールドブレンドとは、同じ畑に異なったぶどう品種植え、実ったぶどうをそのまま醸造する手法を指します。

近年各地でしばしば耳にすることも増えてきたフィールドブレンドですが、
実はこのムーブメントには、立役者がいます。

それがこの方。
オーストリア ウィーンのフリッツ・ヴィーニンガーさんです。


フリッツ・ヴィーニンガーさんのお話を主として進めてまいります。

まず、オーストリアのフィールドブレンドには、
ゲミッシュターサッツと呼ばれるものがあります。

ゲミッシュターサッツとは、
Gemischt(混ざった)+Satz(植樹)=混植混醸
を表します。

様々な品種が植わっている畑のぶどうをまとめて収穫して醸造し、
一つのワインを生み出します。
 
厳密には、ウィーナー ゲミッシュターサッツDACという原産地呼称制度が定められています。
以下がその規定です。

・少なくとも3種類のぶどう品種が、一つの畑に植わっていること。
・ぶどう畑の登録にウィーナー ゲミッシュターサッツと記載されていること。
・主となる品種の比率は50%以下、3番目に多い品種の比率が10%を下回らないこと
・木樽の香り、味わいが強く認識できる味わいがないこと。
・アルコール度数は12.5%以下で辛口
・単一畑を名乗る場合はアルコール度数12.5%以上で辛口でなくても良い
単一畑を名乗るワインは翌年の3月1日までリリースができない。

元来、ヨーロッパ(主にアルザス、ドイツ、オーストリア等)の古来より行われてきた農法で、
もしも、一つの品種が病害などで不作だったとしても
他の品種が収穫できれば、その年の収益は保たれるという、
いわゆリスク回避をもとに編み出された手法でした。

オーストリアの現代ではホイリゲ(醸造所直営の居酒屋)で振る舞われる
シンプルで気軽に楽しまれるワインでした。

しかし、2006年以降オーストリアのウィーンのフリッツ・ヴィーニンガー氏が、
このカジュアルワインであったゲミッシュターサッツの品質を引き上げ、
2013年にDAC(原産地呼称制度)に登録されるまでに至りました。

ウィーナー ゲミッシュターサッツDACは、ワインの生産地域名ではなく
1つのワインのスタイルを認めた初めてのケース
です。
それほどまでにフリッツさんのワインの品質は衝撃的でした。

今回のトピックのきっかけにもなったサイモン・ウールフ氏は
ゲミシュターサッツは、品種の個性に捉われすぎることなくテロワールや
品質の表現を正確に表してくれる手法で、
ただ畑で育ったものをすべて無秩序に混ぜ合わせるわけではなく、
それぞれの品種がどのような役割を果たし、最終的にはどのような役割を果たすのかを
考慮して植えられている。そういったところが気に入っている」

さらに、ヴィーニンガー醸造所のニュスベルク リート・ウルム ゲミッシュターサッツを例に出し、
興味深い要素がたくさん詰まっていて、それらが組み合わさって総和以上のものになる。
これこそが素晴らしいゲミッシュターサッツの条件なのです。

品種にこだわる必要はなく、土壌を含む様々な要素が畑の中で組み合わされ、
深みとニュアンスに満ちた複雑なワインを生み出せるかが重要なのです。」と言っています。

ニュスベルク リート・ウルム ゲミッシュターサッツは、フリッツさんが
初めてゲミッシュターサッツを造った畑であり、フラッグシップワインです。



畑は、オーストリアの首都ウィーンに面し、
土壌は昔、海岸段丘だった影響で砂岩と石灰岩からなります。
生み出されるワインは、複雑な要素がありながらもエレガントにまとまっています。

実は、このニュスベルクには、フリッツさんがMr.ゲミシュターサッツとなるきっかけとなった背景があります。


フリッツさんの家系は代々ワイナリーを運営していました。
醸造学校を卒業後、アメリカのオレゴンで研修を終え帰ってきたフリッツさんは、
ピノ・ノワールとシャルドネの単一品種に注力していました。

単一のピノ・ノワールとシャルドネで世界での人気獲得していたある日、
ウィーンの市街を一望する素晴らしい畑を購入する機会に恵まれます。

その畑がニュスベルクでした。もちろんニュスベルクでも、
ピノ・ノワールとシャルドネで素晴らしいワインを造ろうと計画していたそうですが、
もともと植わっているぶどうは品種がバラバラ。

そう、ゲミッシュターサッツでした。

フリッツさんは、祖父からゲミッシュターサッツについて聞かされていましたが、
信じるわけもなく時代は単一品種だ!と考えていたので、
購入した年は品種をそれぞれ見分けぶどうの樹にペンキで色を塗り、
より分けて別々に収穫し、別々のタンクでワインを造りました。

そして、一つのタンクだけ余ったぶどうを混ぜたワインを造りました。

するとそのあまりを混ぜたワインが一番美味しかったそうです。

その時から人が変わったかのように「時代はゲミッシュターサッツだ!品種に捉われるのではなく、
テロワールと品質の表現をはっきりとするべきだ!」と自分の感覚を信じ、
ゲミッシュターサッツの品質を世に示し続け、ワイン法までもできるほどの快挙に至りました。

世間で決して高い評価を受けているわけではなかった上、
フリッツさん自身もゲミッシュターサッツに期待もしていなかったにもかかわらず、自分の感覚を信じ、
自身の認識を変えて世間の認識までも変えてしまうというのは、決して簡単なことではないはずです。
 
是非、フリッツさんの自信と決意をワインから感じていただきたいです!

そんなニュスベルク リート・ウルム ゲミッシュターサッツはもちろん取り扱っています。
http://www.herrenberger-hof.co.jp/products_search/austria/vienna/wieninger/item_318

ニュスベルクともう一つの畑ビザムベルクのゲミッシュターサッツもございます。
http://www.herrenberger-hof.co.jp/products_search/austria/vienna/wieninger/item_266

ワインのご紹介も抜かりないのが
大田黒のドイツ・オーストリアワイントピックスでございます(笑)
 
ヴィーニンガーさんのゲミシュターサッツは個々の複数の要素が調和を成し、
まるでオーケストラのように仕上がったワイン。
 
是非、フリッツさんとニュスベルクの背景に思いを傾けながらお楽しみください。

では、また来月のドイツ・オーストリアワイントピックスでお会いしましょう!