ドイツワイントピックス
2024/06/12

改めてVDPの規定について

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸
今回は、今更それやる?的な内容です。
ドイツワインのボトルネックにたまについている鷲のマークについてです。
そう実は、右を向いたり左を向いたり、胴のぶどうが増えたり減ったりとマーケティングを意識して細かいマイナーチェンジのあるあの鷲です。

目次


◆VDPについて


ドイツのVDP(高級ワイン生産者連盟)については、皆さんどれくらいご存知でしょうか?
VDPは、1910年から続くドイツワイン業界において知らない人はいない高品質ワインの現在、生産者200以上からなる私的な団体です。
元々は、4社のナチュラルワイン競売者協会が中心となって、ラインガウ、ラインヘッセン、ファルツ、モーゼル、ザール、ルーヴァー地域からメンバーが集まってスタートしました。
VDPは、ドイツワインにおける奇跡の30年と呼ばれる品質向上に大きな影響をもたらしました。
トレードマークである鷲の紋章は、いまや消費者にとって高品質な生産者さんを一目で見分ける基準の一つとなっています。

~大田黒コメント~
100年以上の歴史があって、もともとはナチュラルワインを名乗ってたってすごくないですか?
実は、非常に規則に厳しい団体で今までにも多くの生産者さんが脱退を余儀なくされています。
VDPのメンバー同士できちんと規則を守っているかをコントロールします。
毎年4月に行われる今年で50年目にもなるワインが少なかろうが全登録生産者の参加が義務付けられているマインツで行われるMainzer Weinboerse(マインツァーヴァインヴォルゼ)は1度は訪れるべき試飲会です。



◆VDP.格付けが決まるまで
1971年に国で制定されたワイン法において収穫時のぶどうの糖度のみによって等級が振り分けられ、畑を重要視することなく多くの畑が統合され、それぞれのアイデンティティが失われていきました。
1994年には、高品質なワイン造りを目指すにおいて、ワイン評論家シュチュワート・ピゴット氏立会いの下、望ましくない発展を遂げてきたドイツの過去約20年を是正するかのように、大きな括りの畑名は名乗らないことを決め、当時収穫機械の使用が増加していた中で手摘みによる選果収穫を強調しました。
 
そして、2002年に独自の畑に着目した辛口ワインの格付けシステムを実施しました。
 

今や国が過去の過ちを認めるかの如くVDPの格付けシステムに倣って、ドイツ自体のワイン法も改正されました。

※2026年ヴィンテージから始まります。
 
ドイツワイン法改正については、2021年にドイツワイントピックスで掲載した「ドイツワイン法改正」の記事もこちらを改めてご覧いただくことで
整理がつくことかと思います。
 
~大田黒コメント~
書き方としてそれまでのドイツワイン法が間違っていたように書いていますが、VDPの規則の形として元来の法律を否定するのではなく、付け足すような形で作られています。(VDPホームページの書き方も少し否定的ですが・・・)
何より、畑の素晴らしい個性がしっかりと生かされたワインを特級や1級というわかりやすさとともに打ち出すことでドイツワインの品質の良さに目を向けてもらいたいという点で必要だから、付け足したという感じです。


◆甘口ワイン用・辛口ワイン用の決まり
まず最初にお伝えしたいのがVDPが定めた決まりは、辛口ワイン用であること。
そして今回出てくる表記は、VDPメンバーのみ名乗れるということです。
よくドイツワイン法は、ごちゃごちゃしていてわからないといわれますが、簡単に表現すると国が決めた甘口ワイン用の法律とVDPという私的な団体が決めた辛口ワイン用の規定があるとまず認識ください。
ちなみに2026年からのワイン法適用後も甘口ワイン用(カビネットやシュペトレーゼ等)の法律は残ります。
甘口ワイン用の法律も実は、非常に有意義で気候的条件が理想的で多くの酸を保ったまま糖度を高めることのでき、等級を細かくわかりやすく設定している国は他にはありません。
 
~大田黒コメント~
甘口ワイン用、辛口ワイン用という表現は、語弊があるかもしれませんがわかりやすさに重点を置いた表現です。特に”甘口ワイン用”は、「カビネット トロッケンやシュペトレーゼ トロッケンは辛口じゃないか!」と言われたらその通りです。お伝えしたいのは、果汁糖度を基準にしたワイン法と土地にフォーカスした私的団体の規定ということです。最初っからそう言え!と思われるかもしれません。(笑)
ドイツもドイツワインを日々おすすめしている私もそうですが、ドイツと言えば甘口ワインというイメージのコンプレックスからか甘口ワインを避ける傾向にありますが、私個人としては、ドイツの甘口は大好きです。年によっては、あんなに甘みと力強さを持っていて酸まで高い数値で残っているなんて大袈裟ですが、自然摂理に反する奇跡とすら思えます。
 

◆VDP.格付け(辛口の規定)
2002年に設けられたVDP の格付け規則には4つの区分があります。
 
・VDP.GROSSE LAGE (グローセ ラーゲ:特級畑)
・VDP.ERSTE LAGE (エアステ ラーゲ:1級畑)
・VDP.ORTSWEIN (オルツワイン:村名ワイン)
・VDP.GUTSWEIN (グーツワイン:醸造所所有畑から造られるワイン)
 
この決まりの基本的なこととしましては、名乗る場所の範囲が狭まるほど上の名前を名乗れます
上二つの名称に関しては主に畑の認証が特級か1級かというところです。
VDP格付けにおいて実際に大事なのは、この上2つのVDP.GROSSE LAGE (グローセ ラーゲ:特級畑)と
VDP.ERSTE LAGE (エアステ ラーゲ:1級畑)だけ覚えておけばほとんど問題ありません。
※他の条件は、下記に記載しています。



特級畑(グローセ ラーゲ)から条件を満たして造られるワイン、特級(グローセス ゲヴェックス)のロゴ




1級畑(エアステ ラーゲ)から条件を満たして造られるワイン、特級(エアステス ゲヴェックス)のロゴ
 
ゲヴェックスってなんや!ラーゲちゃうんかい!といろいろとややこしくしているのがやはりドイツ語です。
私もどっちがどっち?と混乱したことがあります。
 
-VDP.GROSSE LAGE(グローセ ラーゲ)とVDP.GROSSES GEWÄCHS(グローセス ゲヴェックス)いわゆるラベル表記にあるGG
-VDP.ERSTE LAGE(エアステ ラーゲ)とVDP.ERSTES GEWÄCHS(エアステス ゲヴェックス)いわゆるラベル表記にある1G
 
これは、ドイツ語で1単語覚えるだけですっきりします。
LAGE(ラーゲ)=畑
つまり、〜ラーゲは特級畑という意味で、〜ゲヴェックスはその〜ラーゲから条件を満たして造られたワインを指します
 
VDPさん、出来れば言葉を分けないで欲しかった・・・。
 
場所を制限したからと言って簡単に名乗れるわけではありません。
もちろんいいワインの名称を名乗るには、内容も一定以上の品質を伴うものでなければなりません。
 
そこで出てくるのが例のピラミッドです。



※VDP.ホームページより引用
 
このピラミッドには、上の格付けのVDP.GROSSE LAGE (グローセ ラーゲ:特級畑)からいわば場所の名前のない
VDP.GUTSWEIN (グーツワイン:醸造所所有畑から造られるワイン)が表記されています。
上の格付けになればなるほど畑が狭まるわけですから、もちろん生産量が少なくなります
ただ少なくなるだけではなく、特級と1級に関しては手摘み収穫のが認められています。
 
各格付けにおいても名称をラベルに記載するには、収量制限が必要となります。
 
・VDP.GROSSE LAGE (グローセ ラーゲ:特級畑)→50hl/ha以下
・VDP.ERSTE LAGE (エアステ ラーゲ:1級畑)→60hl/ha以下
・VDP.ORTSWEIN (オルツワイン:村名ワイン)→75hl/ha以下
・VDP.GUTSWEIN (グーツワイン:醸造所所有畑から造られるワイン)
 
この表記は、VDP.メンバーなら表記しなければならないものではなくて、表記していいものです。
というのも表記するには、条件はありますが特級もしくは、1級の条件を満たしていても格下げして販売することも可能です。
 
 
~大田黒コメント~
たとえば私の研修先のフュルスト醸造所では、所有するすべての区画が最低でも1級畑な上、スタンダードレンジの
トラディションですら十分にGG(特級)の条件を満たすほどの収量ですべて収穫は手作業です。しかし、等級は、グーツワインとしてリリースしています。
このようにこの格付けだけにとらわれず、生産者さん独自のワインのランク分けをしているのでGGは、その醸造所の文字通りの
最高峰のワインの場合が多いです。
 
ほとんどのGG(特級)が決してお手頃な価格とは言えませんが、一度試してみると新しい世界が待っているかもしれません。
 

インスタグラムで大田黒のインスタをこちらからフォロー!