リースリングのジャンヌダルク テレーザ・ブロイヤー

桜の季節を終え、気持ちのいい季節が続いております。
楽しくワインを飲んでいますでしょうか?
トリビアみたいなことですが、人間の味覚や嗅覚は寒い冬よりも温かい春や夏のほうが、
敏感だそうです。(花粉症の方は例外ですね・・・)だから、夏にすっきりとした白、冬にはしっかりめの赤が好まれるのだとか。
さて、今回のドイツワイントピックスの題材は、
「リースリングのジャンヌダルク テレーザ・ブロイヤー」
です。
皆さんご存知、ラインガウの著名生産者であるゲオルグ・ブロイヤーの現当主です。
まずゲオルグ・ブロイヤーがどんな生産者かをお話しましょう。
1960~70年代のドイツワインのイメージといえば、気軽に楽しむフルーティーで優しい味わいの甘口。
それは、日本だけに留まらず世界中でドイツワインは甘いという認識でした。
ドイツ自体がそういった売り出し方をしてきたこと、ぶどうの糖度を基準に等級が定められていることもあり、より甘口のイメージが定着しました。
そのイメージはいまだ完全に払拭できたとは言えませんが、現在ワイン好きの方のほとんどの認識が変わっているはずです。
写真:ドクターローゼンのDr.Lシリーズの辛口ワイン。辛口だと主張するためにも「Trockenトロッケン」ではなく「Dryドライ」と表記。
この認識の変化に、大きく貢献した人物、それがテレーザ・ブロイヤーさんの父にして
ゲオルグ・ブロイヤー醸造所元当主ベルンハルト・ブロイヤー氏です。
ベルンハルト氏は、今から約100年前最も世界で評価されていたワインがラインガウの辛口リースリングであったという史実に基づき、その名声を現代に復活させようとドイツ国内での活躍に留まらず世界中を渡り歩き、辛口リースリングの魅力を伝えて回りました。
国内では、VDP(高級ドイツワイン生産者連盟)の現在のグローセスゲヴェックス等の決まりを作った一人でした。
ベルンハルト氏はブルゴーニュ地方を参考に畑ごとに名前を付け、より細かく区画分類をするべきだと主張しましたが、認められず2000年にVDPを脱退しています。
(その後、ゲオルグ・ブロイヤーでは独自の区分を採用しています。)
偉人ともされている父の死をきっかけに若干20歳で醸造所を引き継ぎ、今や「リースリングのジャンヌダルク」とさえ言われるワイン業界では有名人となっているのがテレーザ・ブロイヤーさんです。
父ベルンハルト・ブロイヤーさんが、他界したのは2004年。
まだ20歳になったばかりのテレーザさんは当時高校を卒業し、スポーツスタジオを開業したところでした。(わかってはいたけど、なんてパワフル・・・)
急遽スポーツスタジオをやめ、急遽他界した父の後を継ぎ醸造所当主になりました。
当時、運営するのは非常に大変だったそうで醸造長のヘアマン・シュモーランツさんがいなければ、最初のヴィンテージは成しえなかったとテレーザさんは語っています。
世界に名だたるリースリングを生み出す醸造所を突如引き継いだわけですから、その重圧は計り知れません。
テレーザさんは現在38歳。非常にパワフルで明るく、わたしたちがオンラインで協力いただくときも全力で明るく良いものを見せようと振舞ってくれます。まさにエンターテイナーです。
以前、日本に来て同行してくださった際にあまりに元気で活動的な様子なので、いつもどんな風に過ごしているかを伺ってみると、「醸造所での仕事を終えた後は、クライミングに行ったり、走ったり、ヨガをして過ごしてるよ。」とのことでした。
1週間足らずの期間、醸造所(フュルスト醸造所)で畑作業を手伝わせていただいただけでへばっていた自分とは、造りが違うとしか思えませんでした。
そんなパワフルなテレーザさんは、以前、若い女性の醸造家4人にスポットを当てたドキュメンタリー映画「Weinweiblichワイン女子」に出演。
映画の中では、活発に明るく振舞っていますが、実はこの「Weinweiblichワイン女子」という題材に少し不満があったそうです。
というのも「ワイン造りは女性だとか男性だとかの問題じゃなく、ただその人の個性の問題でしかない」
という意見だったそう。
映画のトレイラー:
https://www.youtube.com/watch?v=N63J3skvBgs
テレーザさんがいうのであれば、より説得力がありますね。
私のように、男性でも例外が出てしまいますし・・・笑
現在、ベルンハルトさんの時代と比べ、より評価を高め、各誌で最高評価である5つ星を獲得しています。
近年さらに、国内だけでなく世界中で高く評価され、絶大な人気と信頼を勝ち取っています。
テレーザさんの成功の背景には、この明るくエネルギッシュな性格が根本にあるのかと思わされます。
現在も常に新しい挑戦をされているテレーザさん。
父ベルンハルトさんのいとこから、リューデスハイムからさらにミッテルライン方面の下流に下ったロルヒという村の畑を長期間貸していただけるようになったということで新しい畑のワインもできています。
テレーザさんは、「魔法の畑」と呼んでいるようなのでこちらも楽しみですね。
コロナにも飽き飽きしてきた中ですが、
神聖な雰囲気が漂うとまで言われる彼女のワインに元気づけられてみてはいかがでしょうか?
テレーザさんのワインはこちら:http://www.herrenberger-hof.co.jp/products_search/germany/rheingau/georg
今回は、ワイン専門誌Vinumでもテレーザさんが取り上げられていたこともありますが、醸造家1人にスポットを当てて書いてみました。
今回のように1人の人物を紹介する回もいいのかもしれません。
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