Rudolf Fürst/ Franken

ルドルフ・フュルスト/ フランケン

“魔術師”と呼ばれるドイツ赤ワインのパイオニア

白ワイン産地から突如現れたブルゴーニュスタイルのエレガントピノ・ノワール

ジルヴァーナによる辛口白ワインが著名な産地フランケン地方。
フランケン地方の西側に位置し、マイン川の支流、エルフ川に面した村ビュルクシュタットにフュルスト醸造所はあります。
ルドルフ・フュルストは、今や世界のピノ・ノワール好きの間では知らぬ者はいない存在です。
専門誌等の評価に留まらず、MWのジャンシス・ロビンソン女史やシュチュワート・ピゴット氏を始めとする著名な専門家からも「フュルストはドイツのピノマジシャン」、「ブルゴーニュはビュルクシュタットにあり」と非常に高い評価を得ています。

1代で築き上げた名声 ~パウル・フュルストさん~

当時、ドイツではまだまだ甘口白ワインの生産が盛んで、赤ワインは果汁に熱を加えて色素を抽出したものや、甘みの付いたものが主流でした。

そんな中、パウルさんはブルゴーニュ等の世界の著名生産者とコンタクトを取ることで情報を集め、1989年に約10年の月日をかけ、フランケン地方から世界を圧巻させる赤ワイン(ピノ・ノワール)を生み出しました。当時、これほどまでに洗練された赤ワインがドイツから生まれるなんて誰も想像にもしていなかった為、世界を驚愕させました。「ドイツ赤のパイオニア」と呼ばれ、ドイツワインの品質にVDP(高級ドイツワイン生産者連盟)以上に大きな影響を与えたとして伝説の人とされています。

地元のビュルクシュタットは、14世紀頃と「とても良質で貴重なワインを生産していた」と記録も残されています。

パウルさんは2003年ゴー・ミヨ誌にて最優秀醸造家に選出され、2019年にはVDP(ドイツ高級ワイン生産者連盟)からビュルクシュタットのツェントグラーフェンベルクを著名にしたことが表彰されています。

パウルさんに、「ここまで成し遂げるのには、多大なご苦労もあったのでは?」と問うと「私は運が良かった。受け継いだ畑は良い畑だったので、すぐにお客さんがついた。大事なのは、ただ一生懸命取り組むこと。」といかにもドイツ人らしい実直なお答えをいただきました。

1.5haにしか満たなかった所有畑は22haにまで拡大。今も醸造所の名前とともにシュペートブルグンダーの歴史にその名を刻み続けています。

 








天才と呼び声の高い後継ぎ ~セバスチャン・フュルストさん~

ガイゼンハイム醸造学校を卒業後、国内外の数々の著名生産者を渡り歩き、2007年にフュルスト醸造所に帰還。2008年から中心的に醸造に携わっていたセバスチャンさんですが、2018年より正式に当主を交代。

国内で研修生だった時代から、ドイツワイン業界では「とんでもない若手がいる」と噂になっていたそうです。セバスチャンさんの造るワインのスタイルはパウルさんのスタイルを踏襲しながらも、帰るや否や本格的に全房発酵を取り入れる等、最新の技術も取り入れながらより洗練されたエレガントなスタイルになっています。

セバスチャンさんもまた、多くの評論家から注目を集め2018年ファルスタッフ誌、2022年ヴィノム誌にて年間最優秀醸造家賞に選出されています。

最優秀醸造家賞を親子で受賞し、1つに醸造所で3つ獲得しているのは異例です。

セバスチャンさんを始めとするフュルスト家の皆さんは、日本料理が一番好きな料理のカテゴリーということもあってか、ただでさえ生産量の少ないワインで毎年1度のオファーで完売してしまうのにもかかわらず私たち輸入元に対しても一際、熱意をもって接してくださっています。

 

赤色砂岩

フュルスト醸造所を語る上で欠かせないのが赤色砂岩土壌。三畳紀の初期に形成された酸化鉄を含む土壌は、名の通り赤褐色をしており、古くから建造物の石材として多く使用されてきました。赤色砂岩は、非常に水はけが良く、空気を通しやすく、蓄熱性が見込めます。

そのため、とりわけ冷涼なフランケン地方でも盆地であるという条件も重なり、良質なピノ・ノワールの育成が可能となります。(フュルストでは、畑の熱をぶどうに与えられるよう、フュルスト醸造所のぶどうの樹を非常に低く仕立てています)

赤色砂岩がワインの味わいに与える影響としては、フランケン地方の他の土壌と比較して引き締まった酸味になり、鉄分を思わせる緊張感のあるミネラル感が味わいの後半に残ります。

フュルストさんのワインはとりわけ長熟で熟成とともにさらに花開いていきます。

所有している畑

 

フュルスト醸造所の所在地ビュルクシュタットはマイン川の支流エルフ川に面し、シュペサート山地とオーデンヴァルトに挟まれた盆地で特殊なミクロクリマ(局所的気候)を生み出しています。

パウルさんが醸造所を引き継いだ頃、ビュルクシュタット周辺のみのわずか約1.5haだった畑は優良畑を増やし、いまや計22haにも拡大しました。

大きく分けて3つの村に畑を所有しています。




【Bürgstadt ビュルクシュタット】

フュルスト醸造所の本拠地にしてメインとなる村。

Centgrafenberg ツェントグラーフェンベルク】

ビュルクシュタットの醸造所周辺に広がる11haを有するVDP認可のGG畑です。

畑は、マイン川の支流であるエルフ川に面した標高約160~250mにある真南向きの約5~20度の斜面です。

ビュルクシュタットに隣接するシュペサート山地とオーデンヴァルト(森林)に囲まれた盆地の街ミルテンベルクの気候の影響を大きく受け、温かく降雨量が少ないミクロクリマ(局所的気候条件)が形成されています。

土壌は赤色砂岩と赤色砂岩の風化土壌。

Hundsrück フンツリュック】

フュルスト醸造所の中でも、最もスパイシーで力強いシュペートブルグンダーを生み出す醸造所最上の区画フンツリュック。 
「犬の背」という意味の名を持つ2.5haを有するビュルクシュタットの畑(ビュルクシュタッターベルク)の東側の特別小区画です。フンツリュックは、1525年当時に固有の畑として認められ、1546年には、税法上の分類によっても認められた畑でした。
しかし、1971年以降歴史とともにフンツリュックは、ツェントグラーフェンベルクに含まれ、単独の畑として認識されなくなってしまいました。その忘れられた畑が現在、フュルスト醸造所の功績によって、2010年に「フンツリュック」という独立したGG(グローセス・ゲヴェックス)の畑として復活を遂げました。
畑は南向きで、一部テラス状、斜面はパウルさん曰くこの環境でのワイン造りに理想的な約20度の傾斜になっているとのこと。
表土は風化した赤色砂岩で、他の畑よりも一層赤く、全体的に非常に石の多い土壌で、赤色砂岩の大きいところでは約2mにもなる岩の塊が埋まっているところも。フンツリュックの土壌は、赤色砂岩の特徴がそのまま出る土壌で、保温性があり、通気性が良く、とても水はけが良いのでぶどうに適度な負荷がかかり、より凝縮した上質なぶどうが生まれます。
ワイン造りにおいて、とても理想的な土壌ではありますが、ぶどうに過度なストレスがかかりやすい為、管理には油断が一切許されない畑です。

Klingenberg クリンゲンベルク】

醸造所のあるビュルクシュタットから車で約20分、北西に離れた同じくマイン川沿いの街クリンゲンベルク。
クリンゲンベルクは、ドイツの歴史上ブルゴーニュ系品種の一世を風靡した偉大な産地の一つでした。
1500年には、音楽家エラスムス・ヴィトマンの歌に「マイン川のクリンゲンベルク、ヴュルツブルクのシュタイン、ライン川のバッハラッハのワインが最高であると私の時代では言われている」と歌われ、1646年メリアンによるクリンゲンベルク産のワインを絶賛する版画が残されているなど、当時クリンゲンベルク産のワインの品質が素晴らしかったことがわかります。

 

Schlossberg シュロスベルク】

醸造所のあるビュルクシュタットから車で約20分、北西に離れた同じくマイン川沿いの街クリンゲンベルクにGG(グローセス・ゲヴェックス)畑シュロスベルクはあります。古城の下の傾斜に扇状に開いた石壁の超優良区画を、モノポール(単独所有畑)として所有しています。
フュルスト醸造所は、この計1.3haのモノポールを含むクリンゲンベルクのテラス状の畑を2004年に購入しました。その際に約100メートルにも及ぶ石壁を修復し整え、ブルゴーニュ産のクローンの樹に植え替えました。
シュロスベルクは南南西~南西に向けて広がる海抜120~130mの畑です。一部、勾配率約40度を超えるテラス状の急斜面の畑もあり、耕作機など一切の機械は使用できず、畑での作業はすべて手で行われます。シュロスベルクの土壌は赤色砂岩。表土は風化した赤色砂岩と赤土。赤色砂岩で組まれたテラスの石壁に日光が反射し、熱を蓄え、夜は林からの冷気の影響を受け寒暖差が生まれるブルゴーニュ系品種に適した畑です。
クリンゲンベルク産のワインはシルキーで、赤系果実を中心とした香りを持ちエレガントな中にしっかりとぶどうの熟度が感じられます。

Astheim アストハイム】

ビュルクシュタットから東向きに車で約1時間半(約100㎞)走った先にアストハイム村はあります。
この村にフランケン地方で最も著名な畑のうちの一つとされるカルトホイザーがあります。

Karthäuser カルトホイザー】

1997年にパウルさんがアストハイムの畑を引き継いだ際に他の畑と異なり、真っ白で石の多い水はけのよい貝殻石灰岩土壌であったことからシャルドネにぴったりな畑だと確信したそうで現在は、シャルドネとピノ・ブラン(ヴァイサーブルグンダー)が植わっています。
現在新しく区画を増やしている部分を含め僅か約2haのカルトホイザーには、約20年以上前に植えたブルゴーニュクローンのシャルドネ含まれ、生産量は極めて少なく希少となります。新樽比率はどの白ワインであっても10~20%と控えめであくまで土壌の個性をしっかりと表現しています。

 

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