アイスワイン
皆様よく御存知のアイスワイン「ICE WINE」ですが、ドイツでは「EIS WEIN」と表示されます。
冬の極寒期にマイナス7℃以下で葡萄は氷結します。
この氷結ぶどうを溶けない間に急いで収穫し、凍ったまま搾ります。
凍った水分は弾き飛ばされ、少量のぶどうエキスがそのままモストとして搾られ、糖度の高い果汁が得られます。
この果汁が酵母によって発酵するのですが、甘みが強く最後まで発酵せず、
デザートワインに適した極甘口のアイスワインが出来上がります。
こう書くと何か簡単な造りに思いますが、アイスワイン造りには結構なドラマが展開されるのです。
カナダなどは冬季はかなり冷え込む国で、毎年のようにアイスワインの造れる状況になることが多いですが、
ドイツの場合、昨今の地球温暖化の影響により
毎年アイスワインができる状況には必ずしもならず、賭けに近い状況下で「挑戦」?します。
先ず、その年のぶどうの生育状況や気象状況を考慮し、アイスワイン造りに挑戦するかどうかを決めます。
「よしっ!」となればより健全に生育した区画のぶどうを収穫せずに残します。そこからが大変です。
鳥害からぶどうを守るために網を張ったり、日々長期天気予報をチェックしたり。
それでも急激な天候変化などにより、ぶどうは腐敗したり落下したりします。
そうなれば今までのワイン造りも徒労に終わります。
それだけではなく、このぶどうの樹にも負担がかかり、
次の年のぶどう栽培にも結構なダメージが残ることがあります。
「収穫したぶどうを冷凍庫で凍らしたらよいのでは?」というお声もありますが、
ドイツワインの法律により、「ぶどうが樹についたまま氷結する」ことが条件になっています。
無事にぶどうが生育し、いよいよ激寒日が訪れ、夜中に気温がマイナス7℃~8℃以下になり
ぶどうの氷結が確認されると同時に、前もってこの日のためにお手伝いをお願いしていた
ご近所やお知り合いの方々に連絡し、まだ暗い時間から懐中電灯で照らしながら一斉に収穫します。
凍ったぶどうは溶けないうちに醸造所に運ばれ、すぐに圧搾され果汁を絞り出します。
長く辛抱し頑張ってくれたぶどう達が、やっとのことで高級デザートワインになってくれるのです。
ここで一つの疑問が・・・。
ヴィンテージ!
「ヴィンテージ」を調べてみると、「そのワインの原料となったぶどうの収穫年」と書いてあります。
この年の終わりまで、つまり12月31日までに収穫を終えワインが出来上がった場合、
ヴィンテージはその年になりますが、アイスワインの場合翌年に収穫がずれ込むことがあります。
この場合はヴィンテージは翌年になるのでは?
現に2015年にはアイスワインの収穫が2016年1月にずれ込んだ醸造所が多くあり、
でもヴィンテージは2015年で記載されています。
となれば、「ヴィンテージ」とは、「原料となったぶどうが発芽(結実)した年」を言うのではないかと。
こんなことを考えてると、寝られなくなっちゃう。(古っ!)
同じデザートワインに、「貴腐ワイン」というのがあります。
ベーレンアウスレーゼやトロッケンベーレンアウスレーゼがそれです。
ぶどうに菌(カビの一種)が付着し、その菌によってぶどうの表皮が薄くなり、
水分が蒸発し外見上干しぶどうのようにしぼんでしまいます。
一見腐ったように見えますが、アイスワイン同様、
水分が無くなり本来のぶどうのエキス分が極少量搾られ極甘口ワインになります。
どちらも水分が少なくなりぶどうの凝縮されたエキスが残るが、出来上がる量は極端に少なく、
人為的ではなく自然が関わる偉大なワイン、長期熟成も期待できる、という点は同じです。
当然のように価格もそれなりにしますが、これからの時期に大事な方へのご贈答、
ご結婚やご出産など何かの記念日などのプレゼントにいかがでしょうか。
長々と徒然と失礼いたしました。
ヘレンベルガー・ホーフ(株) 岡本圭司