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イベント情報
2021/09/15

第6回ZOOMライヴ フュルストさんとのアーカイブ&質問まとめ!

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸

9月8日(水)に開催いたしました、

第6回 ヘレンZOOMライヴ!
ドイツピノの魔術師、フュルストさん!


当日ご覧頂けなかったみなさま、そして改めて内容を振り返りたいというみなさまへ向けまして弊社YouTubeチャンネル内にアーカイブとして保存いたしました!




また、当日に頂きながらもお答えできなかったご質問に対してのセバスチャンさん本人からの回答をこちらで掲載させて頂きますので、併せてご覧下さい!


当日お答えできなかったご質問に対してのセバスチャンさんからの回答


Q:今年はどんな年ですか?

A:2021年は、ドイツ全体として遅霜の被害と降雨量に苦しまされていますが、私たちの畑は霜の被害はなく、降雨量もタイミングとしては全く問題ありませんでした。

発芽も例年と比べて遅く、とても湿度が高い上、日照時間も短かったです。本来であれば、こういった年はぶどうを健康に保つための仕事量が多く大変な年です。例えば、ぶどうのまわりの葉を早い時期に多めに取り除く必要がありました。これは、ぶどうの房の通気をよくするためです。しかし今日までの8日程はとても好ましい天候です。夏のような気候で毎日25℃程の気温で、乾燥していて理想的と言えます。この収穫前の時期に引き続き大雨が続いていたとしたら、ぶどうは壊滅的でした。

フリューブルグンダーに関しては熟すのが早いのもあり、雨の影響で実の一部が破裂し、腐敗してしまっているので多くの実を細かく取り除くことになります。もちろん収量が予定よりも少なくなってしまいます。しかし、シュペートブルグンダー、リースリングやシャルドネに関しては、健康的な実を付けていて見た目としても非常に綺麗な状態です。もし、このまま乾燥した気候が続けば非常にいい年になることでしょう。ちなみに今年は昨年より約2週間遅い収穫時期となります。

まだ現段階で判断するのは、早いですが綺麗な酸のあるクラシックなスタイルの年となると思います。今から3週間後にははっきりとしたことが言えるでしょう。


Q:ブロイヤー醸造所の醸造長、ヘルマン・シュモーランツが
「ドイツのピノノワールのトップ生産者は、間違いなくフュルストだぜ!」って言うてたな……。

A:おぉ!ヘアマン・シュモーランツさん!彼は本当に素晴らしい方ですよ!

自分がガイゼンハイム醸造学校で就学していた際に2人の友達と一緒にゲオルグ・ブロイヤーの1haの畑でアルバイトをしました。そのうちの一人は現在ブルゴーニュにいるシャントレーヴの栗山朋子さんでした。その時に彼に多くのことを教えていただきました。

本当にいい人ですよ。しかし残念ながら、もう2~3年ここお会いしていません。

私自身ブロイヤーのワインは大好きです。私にとってブロイヤーのリースリングは、リースリングの中で1番です。

普段は、ヴィンテージ発表会もゲオルグ・ブロイヤーと一緒にやっていますが、コロナの影響で2年間、開催できていません。来年こそはできると信じたいです。私の父であるパウルは、先代当主のベルンハルトさんと親友でしたので、テレーザと私は昔からよく知っています。私自身、テレーザの造るリースリングは本当に素晴らしいと思っています。シュロスベルクは辛口リースリングとして世界一の品質を誇ると思いますし、他にもローゼンエックも通常のプルミエクリュに匹敵するテラモントーサも本当にいいですよね。


Q:どんな土壌でもそうですが、乾燥した土壌と雨でぬれた土壌の色はかなり違います。
今日は土壌乾いてますね。雨に濡れるともっと赤くなるんだろうな。

A:このクリンゲンベルクのシュロスベルクもそうですが、持っている畑はとても石がちで、尚且つ少し風化した赤色砂岩が特徴の土壌です。

地下にかけて200-300メートルほどゴロゴロとした赤色砂岩の岩が続いており、非常に赤ワインに適した土壌です。

雨によってより赤い色になります。ビュルクシュタットのフンツリュック(フュルスト醸造所のトップキュヴェ)の赤色砂岩はより鉄分を多く含む赤味の強い土壌です。フンツリュックと比べると、シュロスベルクの土壌はややピンク色(ロゼ色)です。


Q:ドイツのいたるところに「シュロスベルク」があるのですが、
ドイツの人たちは困らないんですか?

A:それについては全く問題ありませんし、デメリットにもなっていません。

シュロスベルクという名を持つワインのほとんどが素晴らしい畑ですので、全く悪いイメージがないはずです。ドイツやアルザスの銘醸畑にはよくお城や古城があり、それが故にシュロスベルクという名前になっています。多くの人がシュロスベルクという名前にはとてもポジティブなイメージを持っている為、困ったりすることはありません。


Q:石灰岩と赤色砂岩とどんな違いがありますか?栽培上とか味わいとか?

A.石灰質土壌と赤色砂岩の違いを説明するのは少し難しいです。何故難しいかというと、石灰岩土壌は、その土地によって全く違う特性を持っており、一言で石灰岩土壌と言っても、そこに合うブドウと造られるワイン自体にも全く違った個性が出ると考えているからです。

ちなみに私たちは、アストハイムに貝殻石灰岩100%の畑を持っていますが、その畑ではシャルドネなどのブルゴーニュ系の白ぶどう品種を植えています。

ブルゴーニュの知り合いの生産者にワインを飲ませていただくと、石灰質土壌は非常に赤ワインに合う土壌だと思いますが、私たちのところでは酸が柔らかくなり、フィネスが少なくなってしまうのがフランケンの石灰質土壌だと考えています。

逆に赤色砂岩土壌では、酸がシャープな印象になるのでピノ・ノワールやリースリングには適していますが、ブルゴーニュ系の白ぶどう品種は、アストハイムの石灰質土壌が適すると判断した為、アストハイムに畑を購入しました。

 

赤色砂岩の特徴は、水はけが非常によく、雨が降っても水分が下の方に流れていくので、葡萄の根が横に行かず、真下に向かって生えていくことで、土壌のミネラル分をぶどうに多くもたらします。

赤色砂岩から造られる葡萄からは、綺麗な酸を持ち、エレガントでフィネスをもった熟成に耐えるワインができます。余韻が長く、力強く仕上がるのも特徴です。


Q:畑にネットをかけているのは何のためですか?

A: クリンゲンベルクのシュロスベルクの畑の周りには、高さ約7メートルに達する古い城壁があります。鳥が城壁に頻繁に止まり、おそらく巣を作ったりしています。その鳥たちが畑に降りてきてぶどうの実を食べてしまうので鳥をよけるためにネットをしています。

実は、シュロスベルクにネットをするのはテラス状の畑が故に大変です。

ビュルクシュタットの4~5haの畑では、秋にイノシシが出てぶどうの実を食べてしまうこともあるので同様の処置と電気の通った鉄線で対策します。春には鹿が出てきて新芽を食べてしまうので同様の対策をします。


Q.ブルゴーニュとカリピノしか知らないような人に
ドイツピノの魅力を伝えるならどう伝えますか?

A.ドイツのピノ・ノワールは、ファルツやアール、バーデンなど全て、それぞれの生産者、土地での個性が全然違います。例えばアールのワインの粘板岩から出来るピノ・ノワールはエレガントで個人的には好きですが同じ地方でも生産者によって個性があり、それぞれ違うと思っています。

海外のピノ・ノワールと比較すると、ドイツはブルゴーニュのワイン造りから学んだものが非常に多く、その中でもドイツというのは温暖化の影響で気候がどんどん暖かくなり、非常に大きなチャンスを迎えている土地だと思います。

温暖化というのは醸造家にとって非常に不安なことではありますが、過去20年に渡って温暖化と叫ばれてきましたが、それでも問題なく、私たちは非常にエレガントなピノ・ノワールを造ることが出来ています。

ブルゴーニュ、オレゴンやタスマニアなどいろいろな国でもブルゴーニュスタイルで造れますが、どうしても土壌の個性の影響で差が出てしまうはずです。

ジュヴレ・シャンベルタンやヴォーヌ・ロマネも非常にワインとして好きで良いものですが、そのまま真似して同じものを造りたいわけではなく、あくまで自分たちの個性を最大限に打ち出したワインを造りたいと思っています。フュルストスタイルのワインを打ち出したいです。醸造としてはクラシックなブルゴーニュスタイルを踏襲しているのは確かです。


Q:温暖化の流れで新しい品種を検討されてますか?

A:近年、温暖化の影響は、本格化してきたように思います。

ぶどうは以前と比べて早く熟しますし、年によっては雨が少なく乾燥した気候です。

しかしながら、私たちの地域はまだ暑すぎるということもなく、現在はそんなに影響を受けていません。例えば30年前の私たちの地域の気候は、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)にとって理想的と言えるものではなかったと思います。しかし、30年前から気候はどんどんと良くなり、近年の気候がシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)にとって完璧に近い状態だと思います。2003年や2018年のような温暖な年と言われる年ですら、私たちにとっては暑すぎることはなく問題ありませんでした。むしろ温暖な年は喜ばしくすらあります。

涼やかな年も、ぶどうは必要な熟度に達します。私たちの畑は川沿いから離れた場所にあることで中でも冷涼な地域にあります。現在温暖化の影響が激しい地域と比べると私たちの畑は明らかに10年~20年はその影響が遅れています。

確かに現在、温暖化は良く話題になっていることも事実で、ぶどうの樹がこの地域でどう育つか試しに今年50本のシラーを植樹しました。

いずれにせよ私自身は、温暖化が畑にもたらす影響については、非常に楽観的で、次の世代でもまだまだ良いシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が栽培できると思っています。

長い目で見たときに、いつかは行きあたる問題だとは思いますが、私たちの地域ではまだまだ先の話だと思います。

ちなみに、私たちの畑では収穫も他のドイツの地域に比べて毎年平均的に約8~14日程収穫が遅いです。

温暖化の悪影響を心配するとすれば、霜害、降雨量の増加、雹害とぶどうの成長が早く進みすぎることです。


Q:いまTraditionを飲んでいます。
ちょい冷ため14℃くらいから、22℃くらいまで温度を上げても全然バランスが崩れないことに驚いています。
フュルストさんの他のワインも、温度に対しての安定性ありますか?

A:14℃というのは良いと思います。というのも、私たちの赤ワインは通常16℃で飲んでいただきたいからです。いまのような暑い時期は、理想の供出温度より1度前後下げた状態でグラスに注ぐことをお勧めします。

14℃から十分楽しめますし、ワインはグラス内で時間が経つと温度は上がり変化していきます。ワインの温度が22℃になり、ワインは空気に触れるので尚、美味しく感じることができると思います。しかし、22℃の温度でグラスに注いでスタートすることはお勧めしません。


Q:いま販売されている2017年、
これから販売される2018年のヴィンテージはどのような年でしたでしょうか?

A:この2つのヴィンテージは全く違う個性を持つ年です。

17年は、涼しい年で収量も通常通りでした。17年は軽快さもあり赤い果実やサワーチェリーのようなニュアンスが中心的でクラシックな印象の年です。

18年は、近年の中でも最も温暖な年でした。それでいて、収穫を早めたことでアルコール度数は高くなりすぎることはありませんでした。18年はとても力強さがあり、余韻も長くやや、濃い色の果実を連想させ、サワーチェリーのようなニュアンスは少ないです。例えば2018年のビュルクシュタッターシュペートブルグンダーは、やや黒系果実のニュアンスすら感じます。私個人として品質的に気に入っています。

ただ、ワインによりフィネスを求める人にとっては、2017年や、2019年のほうをお勧めします。


Q:それぞれのワインの全房比率を教えてください。

A:トラディション シュペートブルグンダーとビュルクシュタッター、クリンゲンベルガー シュペートブルグンダー共に全房率約35%-40%でツェントグラーフェンベルク GG シュペートブルグンダー50-100%の全房率、フンツリュック GG シュペートブルグンダーは多く80-100%入れます。全房発酵を行うためには、しっかりと茎が熟していなければならず、その年によって違います。


Q:ピノ・ノワールと言えば、ドイツ南部と言われますが、
フランケン地方でのピノ・ノワールの特徴は何ですか?

A:バーデンのシュペートブルグンダーはとても有名で人気があります。それに対して私たちのフランケン地方はバーデン地方と比べ、赤ワインの産地として非常に小さいです。フランケン地方のぶどう栽培面積は6000haあるのに対し、私たちのフランケン地方の西側の赤ワインの栽培面積はその中の200ha以下しかありません。

そうなると、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の畑から造られる洗練された辛口のワインの生産量は、必然的にとても少ないものになっています。よって、国際市場において、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の産地として有名になることが難しいです。

あとは、私たちがまだヘレンベルガー・ホーフさんと長くパートナーとして働いていないからかもしれません。おそらく10年一緒にいい関係が続けられ、今回ご覧いただいた皆さんによって多くの日本の皆さんにフランケンのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)を知っていただけることでしょう!



今回のZOOMライヴ、アーカイブ配信を含め、ご覧いただき誠にありがとうございました!

これを機会に是非、フュルストさんのワインを口にしてみてください!