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ドイツワイントピックス
2021/05/12

ドイツのワイン法が改正!ご存じですか?

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社‐ドイツワインの輸入卸


ドイツではアスパラ収穫期の後半に差し掛かり、この頃ほとんどのドイツ人の脳内がアスパラのことでいっぱいになっています。

今回、何をテーマにしようかといろいろと記事を見ていたところ、どこを見ても必ずと言って良いほどアスパラとワイン!などとアスパラのことばかり載っています。


ああ、食べたい。

このままアスパラガスの記事にしてしまうのは、若干悔しい上、もっとお伝えするべきことがあるので、
今回は、全くアスパラとは関係のない、今まで以上にまじめなテーマにします。



第4回 ドイツワイントピックス

ドイツの新しいワイン法

タイトルを聞くと「うわぁ、ややこしそう」とページを閉じてしまいそうになりますが、
大田黒なりにわかりやすく細かいことは省略して解説していきたいと思います。

ドイツは現在、国が主体となっていよいよ本格的にワインのマーケティングに力を注ぎ始めました。

国のワインのマーケティングに対する予算も150万ユーロ(約2億円)から200万ユーロ(約2.6億円)に引き上げ、
作付面積の拡大を年間合計300ha以下に抑え、供給過多による品質低下を防ぎ、
ワインの原産地にフォーカスしたワイン法に改定する
等の大きな動きを見せています。

では、2026年ヴィンテージから適応される新しいワイン法についてお話します。

比較的新しい情報ですよ!


まず、今までのドイツのワイン法についてご存知でしょうか?

エキスパートやソムリエ資格をお持ちの方でも「ドイツの勉強は飛ばしちゃった」、
「勉強したけど曖昧で・・・」という方も多いのではないでしょうか?


大まかに今までのワイン法をおさらいしていきましょう。

まず現在のドイツのワイン法は、以下のような品質等級があります。
 


下のカテゴリーから順に・・・
ドイチャーヴァイン一番下のカテゴリーのいわゆるドイツ産ワイン。地方や地域の区分のないワイン

ラントヴァイン:このカテゴリーが意外とわかりづらいですが、もう一つ上のカテゴリーである方名よりも広域の名前の付くワインで、地方名とは別に26地域に分類されている名称と認識すればよいかと思います。

クヴァリテーツヴァイン:よく聞くモーゼル、ラインガウ、バーデン等の地方名から単一畑(アインツェルラーゲ)までを名乗れるクヴァリテーツヴァイン等級のワイン。現法律のトップカテゴリーです。

また、クヴァリテーツヴァインのカテゴリーと並列する別分類で、プレディカーツヴァインとして皆さんご存知の以下の等級があります。

・カビネット
・シュペトレーゼ
・アウスレーゼ
・ベーレンアウスレーゼ
・アイスヴァイン
・トロッケンベーレンアウスレーゼ

こちらのぶどうの収穫時の糖度等による基準も、ワイン法改正後も今まで通り残ります。

尚、ドイチャーヴァインとラントワインを合わせても全体の生産量の3.3%にしか満たないので、ドイツワインの生産の殆どがクヴァリテーツヴァインもしくは、プレディカーツヴァインとなっています。(2019年統計より)

このクヴァリテーツヴァインをきっちりと細分化して品質等級を付けてあげようというのが、今回の新しいワイン法での趣旨となります。

今までのワイン法では、単一畑まで細分化していたものの何が高品質なのかというのがわかり辛くなっていました。

そこでルゴーニュのように「村名入りワイン、1級、特級」という格付けを設けることとなりました。

以前も、VDP(高級ドイツワイン生産者連盟)がエアステスゲヴェックス、グローセスゲヴェックスを設けていましたが、
国の法的規制があったわけではありませんでした。(ラインガウのヘッセン州のワイン法には規定があります)

それを国がきちんと整理して定めるのが今回の大きな改定です。
以下の図の通り格付けが定まります。
※Deutsches Weininstitut(ドイツ本国のドイツワイン基金) より引用の後わかりやすく編集

簡潔に言うとぶどうの原産地名が小さくなればなるほど品質の高いものになる“というものです。

つまり、ドイツにも法的なグランクリュ(グローセスゲヴェックス)、プルミエクリュ(エアステスゲヴェックス)、
村名格(オルト)、地方名(レギオン)
ができます。

この新しい決まりにより、当たり前のことと思うかもしれませんが、ラベルに表記する村以外の畑で
収穫されたぶどうを使用する場合、その村以外の名を名乗れなくなります。


では、今までは違ったのか?

答えはJain(ヤイン)です。

※「Jain(ヤイン)」:ドイツ語で「はい(Jaヤー)」と「いいえ(Neinナイン)」の合わせ技で、はいともいいえとも言いづらいときに使います。



確かに、以前にも存在したEinzellageアインツェルラーゲ(単一畑)のワインは、その規模が小さいこともあり
他の村の名前を名乗ることはできませんでした。

しかし、いくつかの村にまたがる大きな括りであったGrosslageグロースラーゲ(集合畑)は
以前までのワイン法では、畑がどの位置にあろうともグローセラーゲ内で収穫されたぶどうを
使用すれば、違う村であろうと有名な代表的な村の名前を名乗れるようになっていました。

つまり、違う代表的な村の名前+本当の畑(集合畑)の名前ということが可能でした。

改正後は、それができなくなる為、Region(レギオン)という言葉を畑名の前に表記して
単一畑(アインツェルラーゲ)との表記上の差別化を図ります。


今回の改正により、場合によっては今まで表記されていた村の名前が突然なくなり、畑名は残るという不思議な現象が起きます。

もしかするとこれによって皆さんの好きなワインの表記の気づくと変わっているということもあるかもしれません。

個人的には、明確化につながるので賛成ではあるのですが・・・。


様々な名称が登場する上、似たような名前が多いドイツワイン法(だからわかりにくすぎる!!)ですが
これはドイツ全体の品質の底上げにもつながる大きな変化だと思います。

この他にも等級が上がるにつれての1ヘクタール当たりの収量規制などその他
諸々盛り込まれますが、ひとまず上記のような変更があるんだと認識いただけたらと思います。

 
ちなみに、このような畑にフォーカスしたワインの決まりの基礎を現代ドイツに築いた方がいました。

我らがゲオルグ・ブロイヤー醸造所の前当主ベルンハルト・ブロイヤーさんです。



※詳しくは、第2回ドイツワイントピックス「現代ドイツワインの礎を築いた伝説の人たち」をご覧ください。
http://www.herrenberger-hof.co.jp/blog/2021/03/10/451

ゲオルグ・ブロイヤー醸造所のワイン一覧
http://www.herrenberger-hof.co.jp/products_search/germany/rheingau/georg

ベルンハルトさんの死後、約14年。彼の夢は、様々な人に影響をもたらし今も尚、世界を変えようとしています。


今回の改正でドイツワインの品質がさらに良くなり、ドイツワインの素晴らしさがより多くの人たちに届くのを願うばかりです。


今回のドイツワイントピックスは、今まででもかなりまじめな内容でしたが読んでいただけましたでしょうか?

ここまで読んでくださった皆様!ありがとうございます!
そして、ぜひまた来月も引き続き大田黒にお付き合いください!